呉服・和装・印伝 山森呉服店掲示板

お陰様で創業106周年。店主エッセイが多いかな。

GAP

出勤して店まわりの清掃を済ませ、開店時間の9時半、
店入り口のロ-ルカーテンを上げると、自動ドアの真ん前に一人のおばあちゃんが立っている。

「おはようございます。いらっしゃいませ」
だがおばあちゃんは入ってはこない。

「ここやってるんですか?」
推測翻訳:「この店は廃業した《しもたや》ではなくて、今も営業している店なのか?」

「はい、定休の日曜以外は毎日朝9時半から夕方6時までやっておりますよ」
解説:このばあちゃんは多分寒河江の方ではなく、お医者さん通いか何かで
     時々決まった時刻、例えば決まって午前9時とかに当店の前を通り、
    いつも店が閉まっている様子しかご覧になっていないのではないか。


「何かご用だったのではありませんか?どうぞお入り下さい」
しかしやはり入ってはこない。

「洗濯はしてくれるの?」推測解説:呉服の「シミ抜き」や「洗い」の事をおっしゃっていると思われる。
「はい、呉服屋ですからいつも当り前に承っております」

おばあちゃんは入口から店内を覗き、「ふーん、帯なんかもあるんだ」
私はそのコメントに対する驚きに耐えながら、
「ええ、呉服屋ですから、いつでも帯もきものも、呉服・和装関係のものは大抵扱っておりますよ」

「洗濯してくれるのね。日曜定休ね。はいはい」
去っていかれた。




恐ろしい。偶然いつも閉まっている所ばかり見ている方は、
その店を「しもたや」(仕舞うた屋・廃業した建物)と理解することがあるのだ。

また、以前も書いたことがあるが、
某有名デパートを定年退職なさった方からこんな風なコメントを頂いたこともあった。
「ええええ!!??お宅は自己資本100%で経営してるの!?」
推測解説:「自分が勤めあげた、立派な大百貨店でさえそうではなかった。
     なのになぜこんな吹けば飛ぶような田舎の呉服屋が・・・」


その方のそのご考察は一見ごもっともだが、もう一歩考えてもらえればそれは理の当然であることがわかる。
言うまでもなく、芥子粒のような呉服屋に出資してくれる世間様など絶無だからだ。



「へえー。いつでも呉服の在庫があるんだね」
「えええ?お宅ではシミ抜きもしてくれるの?」
「染替えをしてくれるんだって?知らなかった」
「持込み反物を仕立ててもくれるんだって?」
「風呂敷って、晒(さらし)って、ここで売ってるのか!助かった」
「よそで買った呉服でも色々してくれるの?」

枚挙に暇がない。

ものすごい齟齬である。
自分だけ「当たり前」、「世間様も当然知っているはず」と思い込んでいるのは間違いのようだ。
昔、地域の消費者の方々は呉服屋の使い方をとことんご存知だったものだが。

営業を続ける限り、宣教師のように、寝ても覚めてもうわ言のように、噛んで含めるように、
自分の能力を日々説き続けなければならない時代のようである。







  1. 2014/07/30(水) 11:19:11|
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