呉服・和装・印伝 山森呉服店掲示板

お陰様で創業106周年。店主エッセイが多いかな。

黙祷

あの日から今日で5年。
妻は追悼式典を流しているテレビのある西を、私は被災地の方角の東を。
夫婦あべこべを向き、14時26分、一分間の黙祷。

かつて経験したことのない、激しく長い揺れだった。地震発生と同時に停電が始まった。
当時仙台のアパートに住んでいた長女は幸い春休みで帰省していたし、山形市内で遊んでいた次女も幸い電話がつながり、破損してあちこち通行止めの道路が大変だったが、迎えに行って無事に拾ってくることができた。
吹雪の、寒い夕方だった。

前月から、今に至る習慣のウオーキングを始めていた私は、あの日の夜も自称「東コース」を歩いた。
次女もついてきた。街路灯も、商店も大規模店も、民家も真っ暗。

いつもの十分の一も走っていない車のヘッドライトだけが唯一の灯りだった。
主要な大交差点だけ、警察の方々が発電機をつないで信号を点けていた。
寒い夜だったが、満天の星空だったと記憶している。寒河江の町であんな星空、幼い頃は見えていたのだろうか。

停電は翌日の確か19時過ぎまで続いたから、27時間以上電気が使えなかったわけだ。
あんな長い停電は生れて初めてだった。

夜はろうそくを何本も立ててカップ麺やレトルトカレーでしのぎ、とうに認知症を発症していた母のために、
なけなしの電池を使って夜通し母の部屋とトイレの間を懐中電灯で照らした。

翌朝は初めてカセットガスコンロで米を炊いてうまくいき、嬉しかった。
ニュースはカーナビのワンセグ放送で見た。新聞がいつものように配達されたことに感動し驚愕した。

CIMG5404.jpg


あの当時、日記は書いていなかったので、3月・4月のこのブログを読み返してみた。

4月1日、知人友人のご厚意でハイエースと60リッターの軽油を手に入れ、
一般車通行が許されたばかりのボコボコの山形道・東北道を100回もジャンプしながら人と荷物を満載して走り、
滑り込みセーフで次女の学部開講式に間に合った引越し。
日本武道館での入学式は中止となった。

ガソリンが買えないのでなるべく歩くなどして使わず、給油行列にはほとんど並ばずに済ませたこと。
絶望的に不足した非常食や生鮮食品、乾電池、トイレットペーパーなどの生活必需品が、
量販店では行列+入手困難だったが、町の個人商店では結構楽に買えたこと。

人生史上最大の義捐金を拠出したこと。
隣町の倒壊家屋の解体作業の手伝いに行ったこと。

ビフォー

寒い3月、友人から入手困難な灯油を融通してもらって助かったこと。
やはり友人からガソリンをゆずってもらい、娘の仙台のアパートの被害状況を確認しに行ったこと。
自宅も店もしばらくの間、極端な節電をしたこと。

CIMG5407.jpg


大きな余震に何度も見舞われ、再びの停電もあり、心が萎えたこと。
被災地の被害状況の記録。様々書いてあった。




5年経ち、「震災記憶の風化」が二年目くらいから言われていた。
記憶は残念ながら必ず風化する。

既にこの世にいない世代が経験した災害の記憶は、精々「記録」としてしか残っていないのが世の常。
だから、できることは「正確な記録」を「いかに長く」後世に伝えるか、だと思う。

私は当時の震災に関するここでの記事には、「被災地の隣で」というタイトルを付けた。
わが県は絶無ではないけれども、死傷者や家屋の倒壊は幸いわずかだった。

だが、福島・宮城・岩手他では、死者・行方不明者は18000人超だ。
愛する肉親を失い、家を失い、生業を失い、避難地にあり、いまだに悩み苦しむ被災者は数え切れない。

私とわが県は間違いなく「被災地の隣」だ。
だから、出来ることは自分が生きている内はあったことを忘れないこと。
なるべく子供たちに記憶を持たせること。

あの日を忘れない。出来ることはそれくらいしか無いか。

CIMG5405.jpg



  1. 2016/03/11(金) 22:17:20|
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