呉服・和装・印伝 山森呉服店掲示板

お陰様で創業106周年。店主エッセイが多いかな。

浜の真砂②

呉服屋に生まれ育ったとはいえ、私は誇張でなくきものの「きの字」も知らずに修業先に就職した。
22歳、昭和56年だった。

ゼロからスタートし、すごい勢いで知識と経験を蓄えていった。
修業先の上司・先輩、家に戻ってからは家族、仕入先・加工先。
多くの方々に教えてもらい、あるいは見て真似て覚え、吸収を続けた。

が、呉服・和装の先生は実は他にもいた。
修業先の千葉県でも寒河江でも、大勢のお客様方に育てて頂いたのである。
2、3年修業してきたくらいの若造など太刀打ちできないほどの豊富な経験と知識を、当時のお客様方は持っていた。

それから三十有余年が過ぎ、時代は激変した。
きもの離れは進みに進み、多くの日本人に呉服・和装の知識と経験が無くなった。

まず着ないのだから当たり前だ。恥でも何でもない。
誰が不必要で無駄な知識を苦労し、時間を掛け、身につけようとするだろうか。
私だって呉服屋でなければ何一つ知ろうとはしないだろう。

昔、目利きのお客様には下手な商品説明やおすすめなどできなかった。
笑われ、信用を落として終わりだからだ。

が、今は違う。
悪徳あるいは似非(えせ)呉服屋が盲の素人さんを騙そうとする時、それは赤子の手を捻るほど簡単な時代となった。
更に情けなく恐ろしいのは、売る方にもほとんど知識がなく、客に噓や誤りを言っている自覚も無い場合があることだ。

似非呉服屋が赤子お客に呉服をすすめる時、「これは10万円です」「50万円です」「100万円です」
と言えば、仕入原価がいくらのものであろうと盲お客にとってはその品物はその価格が妥当なものとなり、

プリント染であれインクジェットプリントであれ、似非呉服屋が
「これは手書きなんです」「これ、友禅なんです」といえば盲お客は「そうなんだ」と思い、

反物の端っこにハンコが押してあると「名のある高級品なんだ」と、オートマティックで思い込み、
(ハンコが押してあれば高級品というのなら、私は仕入れた反物すべてに私のハンコでも押してやろうか)

そのお客がなぜかその買った呉服屋にでなく、町の専門店にしみ抜きや寸法直しなどで、
買ったものを高級品である自信をもって誇らしげに持ち込む時・・・

プロは一瞬でモノを見抜く。
それがお客の思っているようなものでない場合、目もあり、真っ当で誇り高い商売しかしていないプロは、
一体どんな顔をしてお相手すればいいのか。

お客が欲するメンテナンスが5万円くらいかかりそうなとき、
「こんな、うちだったら3万円で販売するような代物に、それを上回るメンテ代をかけていいのだろうか?」
しかし依頼する方は、
「30万円もした高級品なのだから、望むメンテが5万円ならやむを得ないレベル」
と考えている、とか。


(つづく)






  1. 2017/02/03(金) 21:34:44|
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